型破りな実験的デニム制作

不完全に限りなく近い所で

オットリンガーは今日まで、恐れ知らずで、反抗心に満ち、不完全さに負い目を感じない独特のスタイルを持ち人々を魅了し、熱狂的なファンベースを獲得してきました。破壊に再構築をかけ合わせた絶妙なバランスが散見されるオットリンガーのガーメントは、一見バラバラに崩れてしまいそうでいて、どのピースも耐久性を保証する精密な作り。彼女たちは見た目の美しさと快適性には妥協を許さず、女性を後押しし、自信を与えるようなデザインを生み出します。従来の美意識を疑問視し、欠陥や不完全さを美として取り入れることで、彼女たちはディコンストラクテッド（脱構築的）フーディーからセラミック製のバッグまで、ありがちなファッションアイテムを意外性に富んだ新たなイメージで巧みに形にします。創業者のCosima Gadient（コジマ・ガーディエント）とChrista Bösch（クリスタ・ボッシュ）はバーゼル スクール オブ デザインで出会い、その後、2016年にオットリンガーを共同で設立しました。 私たちはG-STAR本社にあるバーでガーディエントと顔を合わせ、今回のコラボレーションについて、そしてデニム、ディストピア、デザインについてお話を伺いました。

どんな経緯でブランドの立ち上げに至ったのですか？

クリスタと私はバーゼルで共に学ぶ仲でした。彼女の制作を見たとき、その才能は一目瞭然でした。彼女と一緒に共同で何かをしたら、特別なものができるという確信がありました。卒業後、私はアート業界でアーティストのための衣装作りに関わり、クリスタは別のレーベルで仕事をしていました。私たちは注文を受ける仕事のスタイルよりも委託で受けるスタイルほうが向いていると思っていたので、かなり長い間、一緒に自分たちでブランドを立ち上げる話をしていました。それでやってみることにしたんです。最初のコレクションを出して、VFiles Runwayコンテストで優勝すると、そこからニューヨークでの2つのファッションショーの機会を得ました。ひとつのことがまた別の何かに結びつき、そのあとはどんどんと大きくなっていきました。

オットリンガーの美的感覚は非常に独特で、人によっては脱構築的、ディストピア（反ユートピア）的と見る人もいるかもしれません。このビジョンはどのように生まれたのでしょうか？

興味深いですね。人々の捉え方には時々驚かされます。「ディストピア的」というとネガティブな意味合いにも取れますが、もしかしたら現在の世の中を反映しているのかもしれません。市場は崩壊し、人と人とのコミュニケーションはソーシャルメディアに支配され、すべてがどこかディストピア的に感じる。私たちは創るものに人と人とのつながり、そして世界とのつながりを反映しようとしているので、人々も私たちが作るものにそれを見るのかもしれません。

クリスタとはどう連携して仕事をしていますか？

クリスタと私はかなり違う人間で、人との関わり方はまるで正反対です。一緒にひとつのガーメントを作ると、私たちの個性や極端な側面がそれに表れます。それは美しさでもあり、同時に崩壊に近いものになることもあります。「完璧」な、あるいは洗練された見た目ではないがゆえ、見る人によってはそれがディストピア的に映るかもしれません。でも、私たちがデザインするものは人間同士のつながりを象徴し、不完全さを祝すものです。解釈の余地があるものだから、混乱を招くこともあるでしょうね。

なぜ他のピースではなく、特にG-STAR Elwoodを作り変えようと思ったのですか？

アーカイブを訪れたとき、とにかく目を惹かれたものを選ぼうと決めていました。私たちにとって、G-STAR ElwoodはアイコニックなG-STARのピースとして特に注意を惹かれました。Vinted（*オンラインマーケットプレースのひとつ）で売られている商品も少しリサーチしたのですが、G-STAR Elwoodはその時もっとも売れている商品だったんです。好機だと思いました。なんでもタイミングが大事ですからね。

2バージョンのG-STAR Elwoodを作ったのはなぜですか？

先ほどの話と重なりますが、何も最後まで完成させないというのは私たちの傾向としてあるんです。一つ目を作ってから、ジッパー付きでもう少しエッジのきいた二つ目のバージョンを作りました。結局、両方やることにしたんです。どちらのバージョンにもそれぞれ独自の特徴があります。

このデザインで女性の体型にこだわりたいとおっしゃいましたが、エルウッドを作り変えると決めてから、具体的にはどのようにそのプロセスを進めていったのでしょうか？

スタジオにオリジナルのG-STAR Elwoodを5〜6本届けてもらい、裁断して実際に自分たちの体に直接貼り付けていきました。3Dプロセスのようなものですね。最初の手付かずのエッジはそこから来ています。膝まわりや背部など、一部のアイコニックな要素は残しつつ、より女性の体型に合うシェイプにジーンズを作り変えました。お尻部分など特定の箇所は、より魅力的に見せるようにもう一捻りする必要がありました。また、女性が苦労することの多いヒップ部分のフィット感を高めるために、背部に調整ストラップも付けました。ベルトが必須にならず、1〜2サイズくらいの調整が可能になるので、より着る人に合ったテイラーメイドのフィットを実現できます。

素晴らしいアプローチです。女性の自信を高めるデザインを作りたいということをよく強調されていますが、その点は今回どのように達成されましたか？

私たちはすべて自分たちで実際に着てみて、どう感じるかを確かめます。良い気分になれば、それは良いサインです。自分たちも好んで着られる服だということですから。また、着てもらった友人たちからの感想も重視します。最初のほうのシーズンで、パンツ制作にフォーカスをしたことがあったのですが、私たちのセールスチームは販売がもっとも難しいカテゴリーだと言って反対しました。でも、結局ベストセラーになったんです！身長が高かろうが低かろうが、カーヴィーな体型だろうがそうでなかろうが関係なく、魅力的なフィットにすること、脚とお尻がきれいに見えることにこだわって時間をかけたからです。ジーンズをかっこよく着られたら自信が高まります。それに、女性の大半は「ズボン」を履きます。自分に合うズボンが数本クローゼットにあれば、それで間に合います。私たちにとって、自分たちが作る服がどれも着る人の体を綺麗に見せるものであること、そして、すべてが守られている安心できるものであることは重要です。私たちのデザインを着てやることのすべてにおいて成功してもらいたいと願っているんです。世の中本当に情け容赦ないこともありますし、女性は時にお互いに対して厳しいものです。私たちは背中を押して応援したいんです。「その仕事ゲットしてきて！」「契約決めてきて！」ってね。

女性であることを祝すということ…

まさに、300％その通りです。

デザインのインスピレーションはどこから得ていますか？何か参考にしている特定の文化や受けている影響はありますか？

ポップカルチャーの影響は大きいと思います。私たちにとって、とても重要なインスピレーションの源です。ただ、私たちは服をデザインする時、「今日の女性のクローゼットはどんな感じだろう？」とも考えます。世の中はシンプルなものではありません。いかにうまく世渡りしながら、楽しみつつ、一番クールな存在でいられるか。ジーンズと良いパーカーが嫌いな人はいません。私たちはそういった馴染みのあるアイテムを分解して、見た目の異なるデザインを作ります。つまり、ものすごく着心地は良いけれど、見た目もおしゃれな服を作っています。ショーやキャンペーンを企画するときは、特定の世界を舞台にもします。SFの本からインスピレーションを得て、自分たちのデザインをまったく違う世界に置くことをイメージして作ることもあります。裏にストーリーがあったほうが、人々もつながりを感じやすくなります。私たちがこのブランドを立ち上げたとき、重視したのは服そのものだけではなく、レーベルが持つエネルギー、何か力をもらえるような、女性としての存在を祝すものであることも重要な要素でした。私たちにとって、そういうエネルギーを生み出すことは本当に重要なことだったんです。

オットリンガーのファンも間違いなく特徴的なエネルギーを持った人々ですよね。

そういう層の人たちであることは確かですね。

このG-STAR x Ottolingerのコラボジーンズを着る女性はどんな女性ですか？どんなイメージを持っていますか？

間違いなく恐れ知らずの女性だと思います。このデザインに多く入っているラインは、どこか騎士の鎧を彷彿とさせます。守ってくれるような気がするから、強くなれるんです。恐れを忘れられる。朝、起きてから、夜、クラブに繰り出すまで一日着ていられる人ですね。いろんな人に会って、いろいろな場所に行く。強く、恐れ知らずでいることがテーマです。現代の鎧ですよ。

オットリンガーの近年の成長は目覚ましいものがありますが、インディペンデントレーベルとしてどうバランスを取っていますか？

圧倒されているのは確かです。私たちにとって助けになっているのは、自分たちの仕事が今も変わらず心から好きで、アイデアがとめどなく浮かんでくるということだと思います。果物を絞るとき、いくら絞ってもジュースが出てくるような感じでね。とは言え、やはり取り囲む環境は変わりました。若いインディペンデントブランドとして開始して、今もインディペンデントであることは変わりませんが、当時より成長しましたし、状況も違います。デザインだけではなく、チームと共に交渉をしたりしながら、さまざまな役割をこなしています。時には親友と、時には弁護士とあれこれ立場を変えながら。そうしたことのすべては私たちの創るものに反映されています。

どうすればクリエイティビティを養い続け、常に新しいアイデアを思いつくことができるのでしょうか？

展示会やコンサート、クラブに行きます。自分たちにとってインスピレーションが得られる場所に行くんです。時には外に出て、ワインを飲んで、仕事のことを考えない時間も必要です。そうすると翌日にはリフレッシュして、新しいアイデアがあれこれ思い浮かぶものです。日常の環境から抜け出すことが重要です。本を片手に座っているだけでは、インスピレーションは得られません。外に出て、友達に会い、新しいことを経験して、真に人生を生きなくてはダメなんです。